2016.10
女性の味方は女性
- 山田 典子(やまだ のりこ)
- 日本赤十字秋田看護大学
- 看護学部 教授
研究内容を教えてください
大きく括ると精神保健に関することに取り組んできました。
行政保健師としての10年間で体験したことを基に、家庭内に潜む虐待や暴力、当事者の抱える健康問題(疾病、発達障害、機能障害など)、家族が地域から阻害される結核やエイズの感染症に関することに焦点をあて、そこで何が起こっているのか稚拙ながら言語化してきました。その積み重ねを経て、現在は支援の届きにくい人?必要な支援を求められない人への看護介入について研究しています。その切り口のキーワードが、フォレンジック看護、セーフティプロモーション、スティグマです。
http://www.rcakita.ac.jp/?page_id=10785 参照
進路を決定したきっかけや今の研究をしようと思った
きっかけがありましたら教えてください
看護の道へは姉の勧めで進みました。幼少時から兄弟で一番身体が弱く、病院はなじみ深い場所で、とても看護師として務まらないと思っていました。
でも働いてみると、医療体制の都合で帝王切開が木曜日の夕方駆け込みでなされ、その当初は無理な薬剤投与等で子宮破裂など、沢山の痛ましいお産を目の当たりにしました。
NICUや小児科病棟勤務では、五体満足に生んであげられなかった、健康に生んであげられなかった、母親だから頑張らないといけない???等、お母さん達の涙に何とも言い表せない思いを抱きました。自分の身を削り、24時間付き添いで看護しながら、なおかつ肝臓や腎臓の生体移植の提供者になる母親の、その存在のつらさが約28年前「脳死と臓器移植」という刑法学研究に私を挑ませました。
保健師としての10年間は多問題家族のケースワークに奔走しました。臨床では見えなかったことに直面し、今の研究課題へとつながっています。
仕事と生活を両立するために実践している事、心がけている事はありますか
何事も、適当(てきと~)に。
未だに納得のいく仕事はできていませんし、子育ても然りです。でも、自分のできないところ?ダメなところは、反省はしますが、自分で自分を追い詰めないようにしています。
気負わずに、他の人の工夫で良いところを取り入れてやってきました。子ども達が小さい頃は、大きな食卓テーブルを買って、そこで食事は基い、子どもの宿題を見ながら講義資料づくり等やって、子どもと過ごす時間を少しでも多くとれるようにしてきました。子どもは「母さんは家にいるとご飯作っているか、寝てるかのどっちかだ」といいます(苦笑)。主婦力の高い友人に恵まれ、入院した際、おかずの差し入れや子どもの話を聞いてくれたり、ずいぶん助けられてきました。母、姉、友、多くの女性に支えられ、今、働けています。
研究者を目指す女性大学院生?学部生の皆さんへメッセージを一言お願いします
このたび、研究と結婚そして子育ての両立について振り返る機会をいただきました。子どもがいると確かに「自分の時間がない!」「ゆっくりお風呂に入りたい!」トイレの中まで子どもが追いかけてきて、本当に「一人きりになりたい!!」欲求が高まります。
でも、研究のテーマは日々の生活の中にあり、何らかの形で私たちの暮らしに還元される必要のあるものです。主婦力の高い友人達は、以前、NPOでDV被害者女性を支援していたときの仲間です。DV当事者もいます。女性であることの喜びも、女性であるがための苦しみも共にかみしめてきたからこそ、人間としてどう生きていくか、目標を設定し行動していくことが大事かと。車の運転に例えると、目的地をナビで設定しただけではそこにたどり着けません。自ら運転(行動)すること。運転できない人はまず、教習所(大学院)に通うこと。
千里の道も一歩からです。必ず、新しい景色が見え、世界が開けてきます。
●プロフィール
神奈川県立看護教育大学校保健学科(現:神奈川県立保健福祉大学)卒業
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横浜市で看護師、保健師として12年勤務(結婚、2児を出産。現在は成人。)
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平成11年4月より看護学の教員として勤務(横浜市立大学、青森県立保健大学、札幌市立大学)
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日本赤十字秋田看護大学に勤務
学位(看護学博士)は、東京医科歯科大学大学院で取得しましたが、本来の関心分野は、法学、教育学、法医学なので、引き続き学び続けています。
●マストアイテム(余暇の充実)
品目ではなく、項目でお答えします。ずばり「余暇の充実」です。
適正な目標設定が、モチベーションの維持につながります。基本的に研究は自分との戦いだと思っています。無理だ、ダメだ、できない???と決めつけてしまえば、その通りの結果が目の前に大きな壁となって立ちはだかります。余暇を充実させ、発想と行動を変えてみる、このことが私にとってのマストアイテムです。で、現在は認知症の母に回想してもらうため、着付けを習っています。着物を通して、これまでにない世界が拡がっています。