2021.2
自分の気持ちに正直に
- 松井 ふゆみ(まつい ふゆみ)
- 秋田県総合食品研究センター
- 食品加工研究所 研究員
研究内容を教えてください
秋田県産農水産物を活用した加工方法や機能性など、秋田オリジナルの製品の研究開発を行っています。また、食品加工業者の技術的な相談に対応したり、新商品の開発を共同研究として行ったりしています。
食品の機能性から物性、商品の表示等、扱う分野は幅広く、大学にいたころとは全く違う分野のため、日々、実地で学んでいる状態です。現職に就いて4年になりますが、まだまだ知らない機器、知らない分析手法がたくさんあります。先輩や上司から教えていただくことばかりですが、1つ1つ、自分の知識として身についていくことが楽しく、とてもやりがいを感じています。
進路を決定したきっかけや今の研究をしようと思った
きっかけがありましたら教えてください
前職までは環境微生物学の研究をしていました。微生物に興味を持ったのは高校生のとき、生物の先生から聞いた「現在、地球上の微生物は全存在量の1%も見つかっていないらしい」という話でした。大学で微生物について学べば学ぶほど、未知のことだらけの微生物の魅力にとりつかれ、もっともっと微生物のことを知りたいという思いから研究者の道を歩むことになりました。
今は前職とは全く異なる、「食」にかかわる仕事をしていますが、「食」やその根本である「農」にも以前から興味がありました。実家は農家ではありませんが、地元が茶豆の名産地であり、実家の近くには田畑が広がる環境で育ち、母の実家が兼業の米農家であったことから、常に身近に「農」があり、そこから自然に「食」への興味も醸成されたように思います。また、小さい頃に宮沢賢治の童話の世界観に魅了され、宮沢賢治という人物やその生き方に憧れを抱いたことも、私の進路決定に大きく影響していると思います。
仕事と生活を両立するために実践している事、心がけている事はありますか
夫との家事?育児の分担と、スケジュールの共有です。私が心がけるまでもなく、夫が協力的といった方が正しいのですが。
子どもの持病のため、月に3~4回ほど通院等をすることがあります。どちらかが付き添うために、お互いのスケジュールの共有と調整は必須です。職場は休暇を取りやすい環境ですが、普段から休暇をとることが多い分、子供の感染症等で突発的に長期の休みが必要となったときは非常に申し訳ない気持ちと焦りでいっぱいになります。そのようなときも、夫と交互に休むなどしてなんとか調整しています。
夫も私も県外出身のため、普段は近くに気軽に頼れる身内がいない生活ですが、夫も一人暮らし期間が長く、子ども好きなため、家事?育児にも積極的で、とても助かっています。
研究者を目指す女性大学院生?学部生の皆さんへメッセージを一言お願いします
研究者を目指そうと決めても、親や親戚等、周囲の理解が得られないことも多いと思います。私の両親も、修士まではともかく、博士課程への進学は大反対でした。
進学か就職か悩みながら就職活動をしていたとき、ある企業の面接官に「君、本当は就職じゃなくて、今の研究をしたいでしょ?」と言われ、面接官に見透かされるほど中途半端な気持ちでは、何もうまくいくはずがないということに気づきました。そして、自分の気持ちに正直になろうと思い、研究の道を選びました。当時、両親は諦めの心境で進学を許してくれましたが、いまだに完全には理解や納得はされていないと思っています。
両親には心配や迷惑をかけたと思いますが、私はもちろん自分の選択を後悔していません。周りの人には理解されなくても、本人が満足していることが一番大事ではないでしょうか。理想通り順風満帆には行かないかも知れませんが、自分の気持ちに正直に、後悔しない進路を選んでください。
●プロフィール
東京農業大学卒
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北海道大学大学院修士課程修了
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北海道大学大学院博士後期課程修了
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東北大学に勤務(PD)
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秋田県立大学に勤務(PD、特任助教)、
この間に結婚?第1子出産
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現職。現職3年目に第2子出産。
●マストアイテム
ボールペンと油性ペンです。ペンケースはもちろん、鞄、引出し、白衣や作業着の胸ポケット等、あらゆるところに入っています。筆圧が強いため、ボールペンは気に入った書き心地のものを数種類持ち、用途によって使い分けています。これらは研究だけでなく、家でも必須のアイテムで、ボールペンは保育園の連絡帳に、油性ペンはおむつの名前書きに、毎日大活躍です。