2024.2
「ちょっと気になる」から広がる自分のフィールド
- 瀧田 敦子(たきた あつこ)
- 秋田県産業技術センター 素形材開発部 加工技術Gr
- 研究員
研究内容を教えてください
レーザ加工機を使った熱処理技術に関する研究に取り組んでいます。炭素鋼(0.02%~2%以下の炭素を含む鉄)は、熱の与え方によって強度?変形特性を調整することができます。炭素鋼から作られる自動車部品は、機械加工後に強度を持たせるため負荷のかかる部分に対して焼入れ処理を施します。焼入れ処理は、1000℃付近まで加熱し、水や油で急冷することで表面に硬い金属組織の層を形成する処理です。複雑形状や小径、薄板の自動車部品に対応できる部分焼入れ手法とするため、加熱にレーザを用いた焼入れプロセスを研究対象にしています。加熱による変形を抑え、少ない水や油による冷却で焼入れ処理ができます。目標の焼入れ層分布を得るためには、どのように何秒加熱し、どのタイミングでどう急冷したらよいのか処理条件となる項目は多数あり、条件選定しやすくするための方法を実験と数値シミュレーションの両面から探っています。
進路を決定したきっかけや今の研究をしようと思った
きっかけがありましたら教えてください
高校生の時に化学の教科書で見た製鉄工程と真っ赤な鋼がきっかけで材料工学に興味を持ちました。大学3年の時には製鉄会社のインターンシップに参加し、熱い鋼板がローラーで延ばされていく様子を見て、材料工学の中でも材料の変形や強度について詳しく学びたいと思いました。また、数値シミュレーションにも興味があったため材料力学の研究室を選択しました。研究室配属後は数値シミュレーションを用いて構造物の熱変形量の予測や新しい強度評価手法の開発に関する研究に取り組みました。仮説を立て検証し、少しずつ成果を積み重ねていくことに達成感があり、夢中になって取り組みました。一方で、進路のこととなると就職して自分に何ができるのかイメージできずに、自分に自信が持てませんでした。好きなこと得意なことを極めてはどうかと恩師から助言をもらい、研究職を目指すべく博士課程への進学を決めました。
研究を続ける中で研究成果が積み重なっていくことに加えて、研究成果や自分の考えを人にうまく伝えられた時にもやりがいや楽しさを感じています。今はさらに欲張って、研究成果を実際の製造現場で役立てたいと思うようになりました。所属が県の研究試験機関であり、研究テーマは県内産業の課題をきっかけに立ち上げました。材料力学や数値シミュレーションの知識を基盤に、新しい知識を取り入れながら研究に取り組んでいます。
仕事と生活を両立するために実践している事、心がけている事はありますか
職場と家族の協力があって、何とか両立できています。助けを求める際には、何をどうしてほしいかをはっきり伝えるようにしています。それには、仕事も生活も常に引継ぎができるように余裕を持った準備が必要です。そこで、「まずは7割」を心で唱えて、何事も決めた時間内で余裕を持って形にすることを心掛けています。ある程度の形や見通しがあると、方針が示せて助けを求める際の情報共有もしやすいです。また、「まずは7割」によって生まれた時間と体、心の余裕で自身でも突然の出来事に対応でき、余力があればブラッシュアップに努めています。
理系進路選択を迷っている女子中高生の皆様に向けてメッセージを一言お願いします。
私が理系を選択した理由は文系科目より理系科目の方がワクワクしたから、材料工学に興味を持ったのは真っ赤な鋼がきれいだったからと些細なことがきっかけです。大学に進学するまで勉強が得意だったか、理系科目が得意だったかと考えるとそうでもなく、すべての進路選択は「ちょっと気になる」が決め手でした。苦手なことは本当に必要になれば、必死に吸収しようとして身に付き何とかなるものです。広く浅く知ることも良いですが、「ちょっと気になる」だけのことに歩みを進めてみると「もっと気になる」ことが待っています。勿論、一歩を踏み出すには勇気がいると思います。私の場合、ここぞという時には新しい環境に飛び込んで頑張らなければならない状態を作り、自分を奮い立たせています。進路選択では大いに悩まれると思いますが、まずは得手不得手を考えずに「ちょっと気になる」気持ちを大切にされてはいかがでしょうか。
●プロフィール(経歴)
金鲨银鲨_森林舞会游戏-下载|官网工学資源学部材料工学科卒業
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金鲨银鲨_森林舞会游戏-下载|官网大学院工学資源学研究科材料工学専攻修士課程修了
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北海道大学大学院工学院人間機械システムデザイン専攻 博士後期課程修了 博士(工学)取得
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室蘭工業大学もの創造系領域機械工学ユニット 助教として2年勤務
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秋田県産業技術センターに研究員として勤務 転職した年に結婚
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4年後に出産 育児休暇を経て職場復帰
現在は娘を育てながら研究に従事
●マストアイテム
A4方眼罫のスケッチブック
人に説明する時や自分の中で現状、考えを整理する時に使用しています。
マインドマップのように図で考えると問題点が見えてきます。