人権の広がりを国際政治学から考える
人権という価値観は、なぜ社会に広がるのか

人権?多様性?差別…こうした言葉を目にする機会が、最近増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。私は、人権という価値観が世界に広がっていく政治過程に関心をもち、様々な国?地域で新しい人権政策が生まれた事例を調べています。
人権?平和教育が盛んな地域で子ども時代を過ごし、差別と暴力の歴史を学ぶなかで、なぜ人はこんなに優しくもなれるのだろう、逆に、なぜこんなに残虐にもなれるのだろう、という素朴な疑問を抱くようになりました。
もちろん、人権の広がりは「社会に優しい人が増えたから」といった単純な話ではありません。人権に対する負の影響はいまも各地で起こり、人権という価値観に反発する動きもあります。人々が人権に寄せる期待と不安、その両方を国際政治学の視点から見つめたいと思っています。
企業と人権をめぐる国際規範の形成を追う

とりわけ私は、「企業が関わる人権侵害を予防?是正?救済しよう」という規範に焦点を当てています。2011年、国連人権理事会でビジネスと人権に関する国連指導原則が承認され、少しずつ政府や企業の間で知られる国際規範になっていきました。
背景には倫理的な動機だけでなく、「人権に関心の高い顧客や投資家を失いたくない」という経済的な動機も働きます。また、グローバルバリューチェーンの中でどこに位置づけられる国?企業なのかによって、動機や戦略は変わりうるでしょう。
政府文書や新聞記事の精査、当事者へのインタビューを通じて、こうした動機や鍵となる登場人物、彼らの戦略を推察しようとしています。
研究の知見を、資源と人権を学ぶ教育の場へ

この研究は、人権規範を今後どう広めていけるのかを考えるヒントになりうる一方で、観察者という立場にもどかしさもあります。人権の恩恵を受けて学び研究できている私は、社会に還元していく責務があるのだと思います。だからこそ、教育活動にも力を入れています。
所属する国際資源学部?研究科では資源?エネルギー系の会社へ進む学生が多く、この業界は人権の充足に不可欠である一方、人権への負の影響にも直面しやすい分野です。
授業では資源国政府?鉱山会社?多数派市民?先住民に分かれたロールプレイや、負の影響の事例と企業の取り組みに関する講義を行います。ゼミでは海外資源フィールドワークや卒業論文の準備を進めます。学生の関心は多様ですが、ビジネスや人権が共通項になっているように見えるとき、私でも少しは種をまけているのかもしれない、と感じます。
地道な対話の先にある人権の実践
人権の歴史や事例を学ぶにつれ、人権は決して魔法の言葉ではなく、解決までに長い時間と当事者の痛み、地道な対話と価値観のすり合わせが伴うのだと思い知らされます。ドラマティックな側面もありますが、地味で地道な部分にこそ本質がある――私はそう考えています。
(取材:広報課)
※掲載内容は先生ご本人による執筆です

